育成のあり方について色々と語ろうとしていますが、そもそも「育成とは?」と疑問に思っている方も大勢いらっしゃると思います。
最初の記事でも記載した通り、育成は研修だけではなく、その内容は多岐にわたります。
また、一般的には次のように定義されているようですね。
長期的視野に立って現実に企業に貢献できる人材を育成すること。単に教育,訓練といった狭義の活動ではなく,主体性,自立性をもった人間としての一般的能力の向上をはかることに重点をおき,企業の業績向上と従業員の個人的能力の発揮との統合を目指す。
ようは、「人材の能力・自主性を最大限引き延ばして業績につなげていく為の方法」ということですよね。
では、具体的にどのようなシーンが「育成」に当てはまるのか今回は考えてみましょう。
私の経験を元に、育成と考えられるシーンを大まかにカテゴリー分けしてみました。
1.新人研修
読んで字のごとく、入社したての方の研修のことですね。新人といっても、新卒の方もいれば中途入社の方、パート・アルバイトの方、派遣に紹介予定派遣の方もいます。
それぞれの立場の方たちに最適な情報を分かりやすく伝え、かつ企業のルールも学んでいただくのが新人研修の大きな役割です。
企業によってはまず社内全体の導入研修(社則/業務内容理解/社内スタンダード理解等)を実施した後、配属先での具体的な業務研修(机上~OJT*1)に入るところもあります。
新人研修は「つかみ」ですが、この「つかみ」にも色々な方法があります。
今後はそのパターンをご紹介していきます。
2.フィードバック
フィードバック*2は、もちろんビジネスに多く用いられますが、育成面で言えば、部下⇔上司or同僚⇔同僚で行う相手の行動に対する意見を述べるというプロセスですね。
育成におけるフィードバックでは、肯定的なメッセージを与えるもの(ポジティブフィードバック)と改善を促すもの(ネガティブフィードバック)がありますが、特にネガティブフィードバックにつまづくと、途端に離職する人材が増えます。
どういうことなのか、一例で説明しましょう。
「チェック漏れによる損害」という事故が発生した場合のフィードバック
ここで間違えてはいけないのは、「どうしてそのミスが発生したか?」とミスをした本人に安易に確認することです。
何故なら、「チェック漏れ(ヒューマンエラー)」という原因は既に分かっていますし過去のことですので、「何故チェックが漏れたのか」ということを問い詰めても意味がないからです。
基本的にしたいと思ってミスする人などいませんよね。
一生懸命やっていてもどうしてもミスしてしまうことがある、ということを、事前に理解しておく必要があります。
上記のようなフィードバックの仕方だと、「記憶がない」「ちゃんとチェックしているつもりだった」「漏れないよう次からしっかり確認します」といったような返事しかもらえないでしょうし、恐らくミスした本人はただただ責められているという印象だけ残り、不満につながってしまいます。
裏で「フローが分かりづらい」と100%言われているでしょう。
文句だけで終わればよいですが、「うまく業務を展開出来ないくせに叱責する上司」とみられてしまい、モチベーションが低下しミスがさらに増加してしまうというケースも考えられます。
では、この場合の効果的なフィードバックの方法はどうなるのでしょうか。
私の経験によると、以下のような流れが効果的でした。
- まずミスによってどのような影響が出ているのかを簡潔に説明
- ミスをなくすことが目的であることを説明
- チェックが漏れやすいのはチェック方法に何か欠陥があるからヒューマンエラーが多発するのではないか、という疑いを前提にして、現状の方法の問題点を本人に確認
- その上で、どのような方法ならチェック漏れをしないかを本人に確認
- 今後その方法を試し、効果測定を行うことを確約
出来るだけ短く、サラッと終わらせるのが相手も自分も負担がかからず効果的な方法です。
また、その場で終わってしまうわけではなく、必ず今後の業務で改善に向かい協力し合うということを約束し、実行することも非常に重要になります。
フィードバック後の動き
フィードバック後重要になるのが、「RPDCAサイクル*3」にのっとり行動することです。
もう、R(現状把握)、P(計画)まではミスした本人が実施していますので、あとは、
- D(計画・実行) :ミスした本人が考えた方法を実践
- C(評価) :1ヶ月程度上記を試し、ミス発生頻度を効果測定
- A(改善) :再度本人にヒアリングを実施し、効率化
フィードバックをただの叱責とせず、業務改善につなげること、またその改善方法について、ミスした本人に具体的に考え、実行してもらうことで「必要としている」という姿勢を示し、協力して成果を上げるという成功体験を得ることが出来ます。
もし「C(評価)」の段階で成果が出た場合は、その際に素早く「ポジティブフィードバック」を行い、更なるモチベーションの向上を図ることが可能です。
上記は一例となり、様々なフィードバックのシーンがありますので、今後事例を紹介していきたいと思います。
3.面談
これはフィードバックと通じるものがありますが、フィードバックが一つの事柄に対して行われることが多いのに対し、面談はより広範囲に深堀りし、双方で意見交換を行うという側面があります。定期面談等でメンタルケアを行っている企業も多いのではないでしょうか。
評価面談、報酬面談含め、管理者側は「自分や周囲の環境、会社に対する意見」をどれだけ引き出せるかが腕の見せ所になります。本人が普段どのように感じて業務についているか、様々な情報が今後の運営の重要なヒントになるからです。
もちろん琴線というのは個々で当然異なりますし、漠然と「何かある?」と聞いても返事の内容は期待出来るものではありません。
面談で一番重要なのは、面談実施前の状況把握を行い、さり気なく事前に収集した内容から話題を振ることです。
これにはまるでスパイのように動き回る必要があるんですが、その方法含め、今後ご紹介していきます。
4.社内研修
新人研修とは異なり、既存社員に向けた研修です。
業務に特化した研修が多くありますが、資格取得に向けた研修や、プレゼン対策の研修、新規業務落とし込み等もあるのではないでしょうか。
又、これらの研修とセットになってくるのはフォローアップ研修です。
研修の効果測定を行い、穴となっている箇所を埋めていく目的があります。
私は以前社内研修を受けるたびに「これって業務(現場)と関係ないんですけど」と感じ、なかなか業務に役立てることが出来なかった経験から、研修受講者が普段現場でどのような業務についているのかを把握し、項目と関係づけていくことでより効果的に内容を吸収してもらうことを意識し研修を組み立てていましたが、その他にも様々な研修がありますので、どのようなものがあるか、今後みていきましょう。
5.会議・ミーティング
このブログでは、現場の人材が出席する会議・ミーティングに絞って話をしますが、折角貴重な時間を使って出席しても、決定した内容が現場に活かされないのなら、はっきりいって人件費の無駄遣いになります。
しかも人数の大小にかかわらず、人前で発言することは一定の抵抗感があり、「○○さんと同じ意見です」という方が結構います。
裏で「本当はこう思ってたんだけどな」という発言を多々耳にしました。
そう、意見は持っているのに会議等の場だと言い出せないという方が非常に多いのです。これは訓練が必要となりますので、活発に意見が出せる環境を提供する工夫が必要になります。
ではどのように工夫するのか、私が実際に行っていたことを今後紹介していきます。
6.社内イベント
実は私が一番苦手としていたのがこの社内イベントなのですが、パーティー/飲み会/スポーツ大会/部活動/コンテスト等こちらも多岐に渡りますね。
会社のトップの方々はこういうイベントで社員の特性を見たり、社員同士でコミュニケーションの場としたりと、有益な場としてとらえている方が多いのも事実のようです。
このカテゴリーは他の4項目と比べ変則的ではありますが、どのような内容が育成に役立つか考えていきましょう。
最後に
上記に育成の大まかなカテゴリーを記載しましたが、基本的には業務全般において「育成」は必要です。
単純に対人として「合う合わない」はありますので、全て成功するわけではないですが、気を付けるのと気を付けないのとでは大きく結果が変わってきます。
前述のようなカテゴリーでどのように対応していたか、まずは思い出していただき、更に各項目の詳細記事を今後ご確認いただいた上で、ご自身に最適な育成方法を編み出していただきたいと思います。
また、私が育成を行う上で最も注意したのは、「自分自身がどのように見られているか」を意識することでした。
挨拶一つから、業務中の姿勢まで、部下は上司を非常によく見ています。
「相手に求めることはまず自分から行う」ことを常に念頭に置き、今後の記事を読んでいただければ幸いです。
ではまた!
FM